吐き気や胸焼けがひどい。高齢者に多い逆流性食道炎をご存知ですか?
ここ数年でよく耳にするようになった「逆流性食道炎」。もともと日本ではあまり発症していなかった病気ですが、食事の欧米化に伴い、近年増加傾向にあります。
発症の原因のひとつに加齢があるため、60歳以上の高齢者がかかる病気といわれていましたが、最近は若い人にも増えている病気です。
今回は誰にでも起こりうる可能性のある「逆流性食道炎」についてご紹介いたします。
1. 逆流性食道炎とは?
逆流性食道炎とは、胃液や胆汁などの消化液が逆流し、食道の粘膜を傷つけ炎症を起こす病気です。食道が炎症を起こす為、吐き気や胸焼けなどを感じる方が多くいらっしゃいます。逆流性食道炎の症状として以下の症状があげられます。
【 逆流性食道炎の症状 】
・胸焼け、吐き気
食道に胃液や食べたものが逆流してくることで、胸焼けや不快を感じます。酸っぱい液や苦い液があがってきたり、ゲップが頻繁にでるようになったります。
前かがみになると吐き気が増し、ひどいときには吐いてしまうこともあります。
・胸の痛み
胸のあたりにチクチクと痛みを感じたり、ずーんとした重たい痛みを感じます。狭心症のような症状がでる場合もあります。
・のどの痛み
胃液が食道にあがってくることで、喉の粘膜を傷つけてしまい喉に違和感や痛みが生じます。ひどくなると、声がかれたり、食べ物を飲み込むのもつらくなったりします。
また、気管支を胃液が刺激してしまい、喘息や咳がでることもあります。逆流性食道炎が完治することで、喘息の症状がなくなる人も多くいらっしゃいます。
このほかに、お腹が張る、空腹を感じない、便秘、口臭がひどくなるといった症状が現れることもあります。
胸焼け・吐き気など食べ過ぎたときにも起こる症状ですが、症状が続くようでしたら速やかに病院で診てもらうようにしましょう。
2. なぜ起こるの?(逆流性食道炎の原因)
では、逆流性食道炎はなにが原因で発症するのでしょうか?
①下部食道括約筋の機能低下
通常、食道には胃液の逆流を防ぐための仕組みが備わっています。食道と胃のつなぎ目にある、下部食道括約筋(かぶしょくどうかつやくきん)がきゅっと食道を締め、胃液や食べたものが逆流するのを防いでいます。逆に食事中は、締めていた食道をゆるめて食べ物が胃に落ちるように働いています。
逆流性食道炎が起こる理由のひとつとして、この下部食道括約筋の機能が低下し胃液が逆流しやすくなることで起こります。歳を重ねると、下部食道括約筋が衰えるため簡単に食道へと逆流してしまいます。そのため高齢者の逆流性食道炎の発症が多いといわれています。
② 食べすぎ、脂肪分の採り過ぎ
食べ過ぎ、脂肪分のとりすぎは消化にかなりの時間を必要とします。消化をする為に、胃は沢山の胃液を分泌します。この状態が続くことで、空腹時でも胃は胃液を大量に分泌するようになり、胃が食道まであふれ出してしまいます。
また、脂肪分を摂取したときに分泌されるホルモンが下部食道括約筋を緩める働きがあるともいわれています。
③前傾姿勢
姿勢が悪く猫背の方は、常に前かがみの状態で過ごしています。前かがみの姿勢は、胃を圧迫するため胃液や食べたものが逆流しやすくなります。
背中が丸くなり前かがみの姿勢が続いてしまう高齢者は、逆流性食道炎を発症しやすく再発しやすいといわれています。
3.逆流性食道炎にならないために(予防方法)
誰でも起こりうる可能性のある逆流性食道炎。どのようなことに気をつければ、逆流性食道炎を予防することができるのかをご紹介いたします。
■姿勢を正す
前傾姿勢にならないために、日ごろから正しい姿勢を心がけるようにしましょう。特に長時間座りっぱなしの姿勢でいることが多い方は、腹部が圧迫され続けている恐れがあります。座っているときも綺麗な姿勢を意識し、1時間に1回は腰を伸ばすようにしましょう。
■腹部の締め付けの少ない服を選ぶ
コルセットやベルトの締め付けで、腹部が圧迫されることがあります。腹部が圧迫されることで、胃の内容物が戻りやすくなるため、きつく締め付ける服は避けましょう。
■食生活に気をつける
脂肪分の多い食事や刺激物の摂取を控えましょう。チョコレートなどの甘いもの、レモンやみかんなど酸味の強いもの、コーヒーや緑茶などのカフェインが多く含まれるもの、香辛料などは、胃に負担を多くかけます。
また肥満傾向にある方は、腹八分目を意識し、夕食はあっさりした和食などを適量食べるようにしましょう。
逆流性食道炎は、生活習慣や食生活と大きく関わりがあります。最近、胃の調子が悪いと感じたらまずは食生活から見直してみましょう。
4.逆流性食道炎になってしまったら
では逆流性食道炎になってしまった場合、どのような治療方法があるのでしょうか?
■食事療法、生活習慣の改善
逆流性食道炎になってしまったら、まずは食生活の改善を指導されます。前節の予防法でも紹介しましたが、脂肪分の多いもの、刺激物など胃に負担がかかる食事はやめましょう。
また適度に運動をする、前傾姿勢を避ける、食べてすぐに横にならないなど生活習慣も改める必要があります。根本の習慣を治さない限り、再発してしまう病気であるため、医師の指導にしっかりと従いましょう。
就寝時は、肩から頭を少し高くして寝ると胃液の逆流を抑制してくれます。首が痛くならないよう、腰あたりから15度程度の緩やかな傾斜をつけましょう。
■薬物療法
生活習慣の改善とあわせて、薬を服用し治療を進めていく方法があります。胃液の分泌を抑える薬や、食道の炎症を抑え保護する薬等を用います。
薬を服用することで、吐き気や痛みなどの症状を和らげることができます。しかし、薬は根本的な治療ではありませんので、症状が和らいだからといって勝手に薬をやめたりせず、医師の指示に従うようにしましょう。1ヶ月程度は、薬を服用する必要があります。
■外科的治療(手術)
薬で症状が改善されない場合や何度も再発を繰り返す場合は手術を行います。胃と食道のつなぎ目である「噴門(ふんもん)」を形成する手術です。
入院期間は2~3日程度で、その後1週間程度自宅で安静にする必要があります。
5. まとめ
■ 逆流性食道炎は誰でも発症する可能性がある。
■ 発症する原因としては、胃液の逆流を防ぐ機能が衰えた、または胃液の分泌が多くなったなどがある。
■ 薬を服用したからといって治るものではなく、生活習慣や食生活を改める必要がある。
逆流性食道炎は、再発率の高い病気といわれています。完治してから、元の食生活に戻してしまうことで再発を繰り返す方も少なくありません。
慢性化してしまうと食道ガンになる可能性のある「逆流性食道炎」。単なる「胸焼け」と決め付けず、早めに病院に行きましょう。
筆者 レイス治療院
あん摩マッサージ指圧師の国家資格を持つ施術師が400名以上在籍し、2003年より訪問マッサージを通じて地域社会に貢献している。
ご利用者様の健康を管理するために、技術面ではリハビリを取り入れたマッサージを行い、医療・介護業界での経験をもとにしたお悩み相談、医学的観点からアドバイスを行っている。
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