食べ物が気管に入って咳き込む・むせる。 高齢者の肺炎の原因となる誤嚥(ごえん)とその対策
ご家族の中に食べ物を飲み込むときに咳き込んでしまう方はおられますか?加齢とともに唾液が出にくくなって乾燥する、舌が上手く使えず食道に流し込めないといった症状が出てきます。ここでは食べるときに料理が気管に入ってしまう誤嚥と予防法をご紹介します。
1.誤嚥と誤嚥性肺炎(症状・状態)
若いうちは食べ物が気管に入っても咳き込むことで外に出すことが出来ますが、高齢者は咳をする力が弱いので気管に入ってしまうことがあります。飲み込む(嚥下)際に気管に食べ物などの異物が入り込んでしまうことを誤嚥と呼びます。 肺に入り込んだ食べ物から菌が繁殖することで肺炎の原因になります(誤嚥性肺炎)。日本の死因の3位が肺炎で9割は高齢者です(厚生労働省平成27年度人口動態統計月報年計)。そしておよそ7割が誤嚥性肺炎と言われています。誤嚥性肺炎を発症するのが高齢者に多いため、老人性肺炎という呼び方もあります。
2.誤嚥が起こる原因(原因・理由)
高齢者が誤嚥を起こす原因は主に次のようなものです。
- 加齢によって飲み込む力と吐き出す力が衰える
- 脳卒中などの病気により神経系の異常が起こる
- ガンなどで口や喉の手術によって後遺症がでる
加齢によって食べ物を舌や唾液でまとめる、食道に食べ物を流す、気道に入った食べ物を吐き出すといったことが上手く出来なくなってしまいます。
普段意識することはありませんが、食べ物を噛んで飲み込む際には顎・舌・喉に脳から適切に信号が送られています。脳卒中などにより神経系に異常が起こると信号が届かず、正しく動作せず気道が塞がっていない状態で飲み込んだりしてしまいます。
手術によって飲み込むのに必要な器官が切除されてしまうことで、上手く飲み込めなくなってしまいます。
3.誤嚥と誤嚥性肺炎の予防・改善法(予防法・対策)
誤嚥の予防・改善は本人もご飯を美味しく食べるためというモチベーションがあるため比較的行いやすいです。
・食前、食後に口の中を清潔にする(歯磨きや入れ歯を徹底する)
口の中を清潔に保っておくことで、菌が繁殖しにくくなり誤嚥性肺炎が起こりにくい状態にすることが出来ます。
・嚥下体操
- 首を左右に振る、左右に倒す、首を回転させる
- 両手を頭の上まで伸ばして降ろす、肩を上下させる、肩を回転させる
- 口を大きく開ける、口をすぼめる、横に広げる、奥歯を噛みしめる
- 頬を膨らませる、すぼめる
- 舌を前後に動かして出し入れする、舌を上下左右に動かす
- 発声する(発声のときの嚥下のときの舌の位置が近いため効果がある)
「パ」を繰り返すと口を閉じる運動に、「タ」を繰り返すと食べるときに舌を上顎につけ食べ物を潰したりまとめたりする運動に、「カ」を繰り返すと舌が奥に引かれて鼻へ食べ物が流れ込むのを防ぐ運動になります。
体操は高齢者が一人でやるのではなく、家族や周囲の人と一緒に楽しく行えるようにしましょう。
・食事内容
高齢者が飲み込みやすいように食事内容を工夫します。サイズを一口大に切り分けておく、煮崩れるまで煮込んでおく、片栗粉やとろみ調整食品でとろみをつけると飲み込みやすくなります。他に高齢者が食べにくいものとしては
- 弾力の強いもの(餅やこんにゃくなど)
- 乾燥してばらばらになりやすいもの(ふかし芋など)
- 水分の多いもの、汁物、お茶など
- 酸味の強いもの
などがあげられます。
・食事の姿勢
食事をする際にやや前傾姿勢で顎を引いた状態だと誤嚥しにくくなります。ベッドから起き上がれない場合は枕やクッションなどを背中や腰に当てるなどして無理のない程度に起こしてあげましょう。スプーンなどでご飯を食べさせている場合は、スプーンを下から持っていくことで自然と顎を引いた状態になりやすいです。
・食後すぐに横にならない(胃液の逆流防止)
食後すぐに横になってしまうと、胃液が逆流しやすくなりそれが気管に入る可能性があります。食後30分くらいは横にならないようにしましょう。
4.まとめ
- 食道に入るはずのものが気管に入ってしまうことを誤嚥と呼ぶ
- 誤嚥によって誤嚥性肺炎を引き起こしてしまうことが高齢者の死因となっている
- 誤嚥は加齢・病気・手術によって喉の機能が低下してしまうことによって起きている
- 誤嚥は口の中を清潔に保つ、嚥下体操を行うなどで予防することが出来る
人生の楽しみの一つである食事ですが、誤嚥が頻発すると苦痛になって生きる意欲を失うことになりかねません。誤嚥と誤嚥性肺炎の対策の基本は予防です。普段から注意してあげて、ご飯を食べるときにむせることが多くなってきたな、飲み込んだ後に声や呼吸音がおかしいな、といったことに気がついたら早めの対策をしていきましょう。
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