療養費とは?保険証を忘れてしまった、保険医療機関外でのやむを得ない治療は全額自己負担?!(療養費の仕組みと、医療費との違い)
「やむを得ず病院に行かなければ・・・でも保険証がない。」というときに「保険が使えないから、治療費が高い。」と思う方も多いのではないでしょうか。そんな「やむを得ない事情」で治療を受けた場合に、後からその費用が払い戻される場合があります。このときに払い戻される費用が療養費と呼ばれるものですが、意外と知らない方も多いのではないでしょうか。今回はこの療養費について、医療費との違いや、どういった場合に支給の対象となるのかをご説明いたします。
1. 療養費とは
医療保険に加入されている方は、保険医療機関にて診療を受ける場合に、被保険者証を提示し、診療を受ける「現物給付」が原則となっています。では、旅行先などですぐに手当てをしないといけない場合に、保険医療機関が近くになく、保険医療機関外で手当てを行った場合は、どのようになるのでしょうか。このような場合は、保険診療ではなく、自費診療として、その金額を全額負担せざるを得ません。しかしながら、このようなやむを得ない事情で保険診療を受けられない場合には、その費用について療養費が支給されます。療養費とは、保険医療を受けることが困難な場合、またはやむを得ないと認められる場合に支給されるものです。
2. 医療費と療養費の違い
では医療費と療養費は何が違うのでしょうか。それぞれの違いについて詳しく解説していきます。
<給付方法の違い>
医療費は現物給付(療養の給付)と呼ばれ、保険者(健康保険事業の運営主体)は、患者に対し、医師や看護師、薬剤師などを通して医療サービスそのものを提供します。
一方、療養費は、現金給付(療養費の給付)と呼ばれ、保険者は患者に対し、現金を給付します。
<給付のタイミング>
医療費について、病院で受診した場合で考えてみましょう。
① 病院を訪れ、医者の診断に基づき医療サービスの提供を受けます。
② 医療サービスを受けたのち、病院の窓口で医療費の一部負担額を支払います。
③ 病院は医療費のうち患者が支払った一部負担額を除いた残りの金額を保険者に請求します。
さてこの場合、医療費の給付のタイミングはどこになるでしょうか。
答えは①です。医療費の場合、医療サービスの提供を受けたタイミングで患者へ給付されます。
では、療養費の場合はどうでしょうか。施術所で施術を受けた場合で考えてみましょう。
① 患者は施術所を訪れ、施術を受けます。
② 施術を受けたのち、窓口で施術代の全額を支払います。患者は施術代のうち、自己負担額を除いた残りの金額を保険者に請求します。
③ 保険者はその施術が療養費の給付と認められる場合に限り、請求額を患者に支払います。
さてこの場合、療養費の給付のタイミングはどこになるでしょうか。
答えは③です。 医療費と違い、保険者から現金の支払いがあったタイミングで患者へ給付されます。
3. どのような場合に給付されるのか
療養費は保険医療を受けることが困難な場合、またはやむを得ないと認められる場合に支給されるとご説明しましたが、果たして、「保険医療を受けることが困難な場合」「やむを得ないと認められる場合」とは具体的にどういう場合でしょうか。保険者が認める・認めないは、それぞれの保険者によって見解が異なる部分もありますが、具体的な例をいくつかご紹介します。
<海外での治療>
海外への旅行中に、早急に手当てが必要な怪我や病気になり、海外の病院などで手当てを受けた場合は療養費が支給されます。
<接骨院・整骨院での施術(柔道整復)>
保険医療機関では十分な治療ができず、施術による治療効果が認められる場合は支給の対象になります。
<訪問医療マッサージ・鍼灸院(鍼灸・あん摩マッサージ)>
柔道整復と同様、保険医療機関では治療目的が果たせず、鍼灸やあん摩マッサージでの施術による治療効果が期待できる場合は支給の対象になります。
どの例にも当てはまることですが、あくまでも療養費は、患者が「療養費を使って治療を受けたい」という患者の希望で認められるものではありません。しかしながら、医療選択の自由は患者にありますので、柔道整復やあん摩マッサージ、鍼灸などを受けたい場合は、お近くの施術所や治療院などで、自分の症状について相談してみるといいでしょう。
4. まとめ
- 療養費は、保険医療を受けることが困難な場合、またはやむを得ないと認められる場合に支給される。
- 医療費とは異なり、現金で給付される。(療養費の給付)
- 海外での治療や、接骨院(整骨院)、訪問医療マッサージ、鍼灸院などでの施術は療養費が認められる場合がある。
今回は意外と知られていない療養費についてご説明しました。あくまでも、支給の対象となるかは保険者の判断に委ねられていますが、万が一のときや、病院では十分な治療ができず、接骨院(整骨院)、訪問医療マッサージ、鍼灸院などで施術を受けたいとお考えの方は、療養費の仕組みについて理解しておきましょう!
介護を知るトップへ
サイトトップへ