脳梗塞後遺症維持期からの退院後自宅でのリハビリの効果を高める方法
1.脳梗塞後遺症とは
梗塞は、日本人の死因の第四位である「脳血管障害(脳卒中)」の一つです。脳に栄養や酸素を供給する動脈の閉塞、または狭窄により、脳組織が壊死してしまう病気で、破壊されてしまった脳の部位や量に応じて、様々な障害が現れる事を脳梗塞後遺症と言います。他に脳卒中に分類されるものには、脳内で血管が破れて出血する脳出血、脳を覆うクモ膜と軟膜の間の空間で出血するクモ膜下出血などがあります。
2. どんな後遺症が残ってしまうの?
脳は、部位によって担っている役割が違うため様々な症状が現れます。よく現れるものとしては、以下のようなものがあります。
- 運動障害
- 言語障害
- 記憶障害
- 嚥下障害
脳が損傷したことにより、脳からの指令が上手く伝わらなくなり、麻痺や思い通りに動かせなくなる状態です。体の片側にだけ麻痺が出る片麻痺、部分的に障害ある、筋力低下に留まる場合は不全麻痺と呼ばれます。
左脳にある言語中枢が損傷した場合は、言葉の理解や話したり書いたりして表現する事が難しくなります。左脳の中でも損傷した部位により、人の話している事は理解できるが話せない、滑らかに話せるが言い間違いが多い、物の名前が出てこないなど、様々な症状が出る場合があります。
記憶に関する障害ですが、今見ている物を覚えられないような短期の記憶、明日の約束を覚えられないような中期の記憶が出来なくなる「記憶する事が出来ない障害」と、今日の日付や自分の事を思い出せない「思い出すことが出来ない障害」に分類されます。
飲み物や食べ物を口に運ぶと、筋肉の働きによって胃に送られていきますが、脳の障害により筋肉が上手く働かなくなると、食べ物を上手く飲み込む事が出来ない、食道から胃にスムーズにいかないために気管に入ってむせてしまうなどの症状が出る場合があります。
3.後遺症を治すにはどうすればいいの?
脳梗塞のリハビリは、3つの段階に分類されます。1つ目は発症後すぐの段階である急性期、2つ目は回復が顕著にみられる回復期、3つ目はそれ以降の維持期(生活期)です。それぞれの段階について説明していきます。
- 脳梗塞後遺症急性期(発症から数日後~1か月くらい)からのリハビリ
- 脳梗塞後遺症回復期(〜6か月)からのリハビリ
- 脳梗塞後遺症維持期(6か月〜)からのリハビリ
以前は、治療がひと段落してからリハビリ専門の施設に移動し、リハビリを開始するというのが一般的でしたが、近年は脳梗塞後遺症のリハビリは発症後の早い段階から行う事でより後遺症が残りにくくなると言われ、治療と平行してリハビリを行う事が一般的となっています。
これは発症後、長期に体を動かさないと、筋力の低下や関節が硬くなり動かしにくくなる事や、関節が変形してしまうのを防ぐ事に繋がるためです。1週間寝たきりの状態だと筋力が約20%低下します。その予防のためにも早期からのリハビリは有効です。 最初はベッドの上でストレッチなどが中心になりますが、起き上がり・座位の保持・車椅子への移動ができるようになると、訓練室でのリハビリになります。起き上がり・座位の保持・車椅子への移動ができるようになる時期は、麻痺の度合いなどにより異なります。
この時期になると、体のどこに後遺症が残っているのかが明確になってきますので、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士など様々な人が関わり退院後の生活に向けて食事やトイレなどの日常生活動作のトレーニングをおこなっていきます。回復期という名称がつくだけあって、ご本人もトレーニングによっての回復を実感できる時期でもあります。
回復期以降は維持期と呼ばれているように、回復期のようなスピードでは改善がみられなくなってきます。しかし、人の脳には脳梗塞などで損傷してしまったルートの迂回路を作る機能がある事が判明しており、時間はかかりますがリハビリやトレーニングをして正しい動きを教え込んでいけば、維持期でも改善していくことは十分にありえる事です。
4.自宅で効果的なリハビリを行う方法は?
病院に入院していられる期間は150日(重度の場合は180日)と決まっており、そこからは自宅でのリハビリに切り替わる方が多いです。専門のスタッフの方と一緒にリハビリをする訳ではないので、余程の強い意志の持ち主で無い限りリハビリのペースは落ちてしまいがちです。そのような場合は、介護保険を使って病院での外来リハビリと同じようにリハビリが受けられる通所型リハビリテーションや、医療保険を使って自宅に国家資格を持つマッサージ師さんが来てくれる訪問医療マッサージなどを活用してみてください。きっと自宅でのリハビリのモチベーションを高めてくれるでしょう。
5.まとめ
- 脳梗塞の後遺症は、損傷した部位により出る症状が異なります。
- 後遺症の予防は、早期からのリハビリが重要です。
- 在宅でのリハビリはモチベーションを高め、通所リハビリや訪問マッサージも活用も有効です。
リハビリは本当に大変ですが、コツコツと続けていくことが大切です。私たちも少しでもそのお手伝いが出来ればと考えています。
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