高齢者の耳掃除はどうやってすればいい?耳垢がたまりやすい高齢者の耳かきの仕方
年を重ねると耳垢がたまりやすくなることをご存知でしょうか?耳にはもともと、耳垢を自然に外に排出する自浄作用が備わっています。しかし、高齢になると自浄作用が衰えるため、若い頃と比べて耳垢がたまりやすくなるのです。
1. 耳垢とは?
耳垢とは、耳内部にある耳垢腺から分泌された物質、老化した皮膚、ごみやチリが混じりあってできます。この耳垢にも重要な役割があります。
・外部からのごみを耳に入ることを防ぐ
外部から耳に入ろうとする、チリやほこりをキャッチする役割を果たしています。
・雑菌の繁殖を防ぐ
耳垢には殺菌成分が含まれており、耳の中で細菌が繁殖するのを防いでいます。
・虫の侵入を防ぐ
耳の中に虫が入らないように、虫よけの効果のあるにおいや苦味のある成分が耳垢には含まれているといわれています。
・耳内部の皮膚を保湿する
耳垢には、油脂成分が含まれているため耳内部のデリケートな皮膚や鼓膜を保湿、保護する役割も担っています。
また耳垢は乾性耳垢と湿性耳垢の2種類に大きく分けられます。乾性耳垢は油脂成分の少ない、カサカサとしたドライタイプの耳垢です。湿性耳垢は油脂成分が多く、ねばねばとしたウエットタイプの耳垢です。
日本人の約80%が乾性耳垢であるといわれています。そのため、昔から掻き出しやすい耳かきを使い、耳掃除をする方が多いとされています。しかし、耳かきでの耳掃除は耳の皮膚を傷つける危険性が高まるため、十分に注意が必要です。
2.耳垢がたまると良くない理由
役割がある耳垢ですが、耳垢がたまることで様々な問題を引き起こします。
1)耳垢塞栓(じこうせんそく)
耳垢がたまってしまうと、耳垢塞栓(じこうせんそく)を起こす可能性があります。
耳垢塞栓とは、耳の入り口から鼓膜まで続いている外耳道を耳垢が塞いでしまった状態のことをいいます。症状としては、耳鳴りや頭痛、めまいを起こします。また、お風呂などで耳に水が入り、耳垢がふやけて完全に耳を塞いでしまうようになると、難聴を引き起こします。
80歳以上の方の約20%が、左右どちらかの耳に耳垢塞栓があるという調査結果も出ています。手の震えや麻痺などから自分で耳掃除をしなくなったことで、耳垢がたまってしまうことが多いようです。
2)認知症の原因にも
聴力は認知症とも深く関係しています。
認知症が疑われる高齢者のうち5%の方が、耳垢塞栓になっていたという研究結果がでています。耳が聞こえづらくなることで、聴覚からの刺激や脳に伝えられる情報が減り、認知症の発症や進行に影響すると考えられています。
さらに、聴力が低下することでコミュニケーションを積極的にとることができなくなります。人の話を聞いて理解し、話そうとする機会が減るとますます認知機能が低下してしまうのです。
3. 耳掃除のやり方
ここでは、本人以外の方が綿棒を使って自宅でできる耳掃除の方法をご紹介いたします。乾性耳垢の方でも、お風呂上りなど耳垢が湿っている状態だと綿棒で上手に耳掃除をすることができます。
1) 耳の中を確認する
明るい場所で、耳の状態を確認します。このとき、耳を少し後ろに引っ張ると奥まで見えやすくなります。
大きな塊や奥のほうに耳垢がたまっているようでしたら、無理にとろうとせず耳鼻科で診てもらうようにしましょう。
2) 耳の入り口1cm辺りまで綿棒を入れて掃除をする
耳を少し後ろに引っ張りながら、もう片方の手で綿棒を持ちます。
耳の入り口から、1cm辺りまで綿棒を入れ、やさしく耳垢を掃除しましょう。耳垢の原因となる物質を分泌する耳垢腺は、耳の入り口から1~1.5cm程度のところにあります。そのため、耳垢は耳垢腺より奥にはできないといわれています。
皮膚をこすらないように、綿棒をゆっくり回しながら外に出すようにしましょう。綿棒は使い方を間違えると、耳垢を奥へと押し込んでしまう可能性があります。通常の綿棒ではなく、ベビー用の細い綿棒を使うことをおススメします。
3) ガーゼで耳の外側を拭く
耳の中の掃除が終わったら、清潔な湿らせたガーゼで耳たぶや耳の後ろも拭きましょう。
4. 耳掃除のポイント
1)お風呂上りや綿棒を湿らせて耳掃除をする
耳垢が乾燥し皮膚に張り付いている場合、無理にはがそうとすると出血する恐れがあります。綿棒をベビーオイルで少し湿らせてから、耳掃除を始めると良いでしょう。一番いいのはお風呂上りのタイミングです。
2)嫌がる場合は無理にしない
人に耳掃除をしてもらうのが、嫌だという方もいらっしゃいます。一度してもらったが痛かった、人に耳掃除をしてもらうのは怖いなど理由は様々です。そんなときは、無理やりすることはやめ、耳鼻科に行き耳掃除をしてもらいましょう。専門の器具を使い、安全かつきれいに耳垢をとってもらえます。
3)頻繁に耳掃除をしない
耳掃除は2週間に1度を目安に行ないましょう。耳掃除をしすぎると、耳の中を傷つけてしまい中耳炎になることもあります。やりすぎないよう注意しましょう。
5. まとめ
■耳かきでの耳掃除は、耳内部の皮膚を傷つけないように十分に気をつける
■綿棒での耳掃除は奥に耳垢を押し込まないようにする
■耳垢が固まっている、または奥にある場合は耳鼻科で診てもらう。
■耳掃除はやり過ぎないようにする
いかがでした?高齢になるとどうしても耳が聞こえづらくなります。しかしその原因は様々で、耳垢の場合もあります。耳垢を掃除することで以前より聞こえが良くなる方も多くいらっしゃいます。
まずは定期的に耳の中の状態を確認することが大切です。また耳鼻科に行けば10分程度で耳掃除をしてもらえるので、「耳垢ごときで大げさだ」と思わず診てもらうようにしましょう。
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