高齢者が日中にウトウトするのは病気?傾眠の原因と対策
年齢を重ねると睡眠は変化していきます。健康な高齢者でも寝つきが悪くなったり、浅い睡眠が増えたりします。日中にウトウトしてしまうこともしばしば・・・。しかし、ウトウトした状態が続く場合は、何らかの病気が隠れている可能性もあります。
今回はウトウトした状態が続く「傾眠(けいみん)」についてご紹介いたします。
1. 傾眠(けいみん)とは
傾眠とは、時間を問わずウトウトと眠くなる状態です。放っておくとすぐにウトウトしてしまいますが、完全に寝ているわけではないので、声をかけられる、肩をたたかれる等の外部からの軽い刺激で目を覚まします。
傾眠は意識障害のレベルの1つです。意識障害のレベルは「傾眠」「昏迷」「半昏睡」「昏睡」の4つに分けられ、傾眠が重度になると昏睡状態に陥ることもあります。
通常、ウトウトして目を覚ますと「寝てしまった」と自覚がありますが、傾眠は意識障害のため「寝てしまった」という自覚がありません。
目覚めたときどこにいるのか、今日が何月何日なのかわからなくなることもあります。特に認知症患者の方はこの症状が強くなります。
傾眠状態の時は、誤嚥の危険性が高まるので食べ物を口に入れるのは控えましょう。
2. 傾眠の原因
傾眠は脳になんらかの損傷が起こることで、発症するといわれています。
1)認知症
認知症は脳の細胞が何らかの原因で損傷・破壊されることにより発症します。認知症を発症することで、体内時計を調整する伝達物質が減少し、睡眠障害を起こします。無気力になり、常にウトウトしている状態に陥ります。
傾眠は認知症の周辺症状の一つに位置付けられています。そのため、認知症と診断されていない状態でも日中に傾眠が多発する場合は、認知症を疑う必要があります。
2)慢性硬膜下血腫
硬膜下血腫は頭を打ったことが原因で、頭がい骨の下の硬膜と脳の間に血が溜り、脳を圧迫する病気です。頭を打って数か月経ってから、歩行困難や認知障害、傾眠などの症状が現れます。急に傾眠が増えたと感じたら、病院で診てもらうようにしましょう。
3)疾患
なんらかの疾患が原因で傾眠に陥る場合もあります。内臓の疾患による高熱でぼんやりし、傾眠に陥ることもあります。疾患が完治したり、発熱が治まったりすることで傾眠の症状も消えます。
また、薬による副作用で脳の活動が低下し、意識障害が起こっている可能性もあります。特に、精神安定剤やパーキンソン病の薬は意識障害を起こすことがあります。薬を飲み始めてから傾眠の症状がみられるようになったら、医師に相談するようにしましょう。
3. 気を付けること
ウトウトしているだけだからといって、そのまま放っておくと持病を悪化させる可能性もあります。
傾眠を繰り返すことで、食事を摂取することが困難になり栄養失調や脱水症状に陥りやすくなります。
また、ベッドにいることが多くなるため体力や筋力が低下し、その結果寝たきり状態になってしまう方も少なくありません。
なにが原因で傾眠状態になっているのかをしっかり把握するようにしましょう。
4. 傾眠かな?と思ったら(対策)
1)医師に相談する
傾眠の原因として病気が疑われる可能性があります。まずは医師に相談し原因となっている疾患を治療しましょう。
薬の副作用が疑われる場合、薬を替えてもらう必要があります。いずれにせよ、自己判断はせず医師に相談するようにしましょう。
2)声をかけたり、動くようにする
眠っていることが多いと筋力が衰えたり、身体機能が低下していきます。
声をかけることはもちろん、軽い運動をしたり、散歩に行くようにしましょう。昼間にしっかりと活動することで夜ぐっすり眠ることができます。
3)日光をあびる
朝、日光を浴びることで体内時計がリセットされ朝・晩の区別がしっかりとつくようになります。
特に認知症患者の方は夜眠れない、昼夜が逆転する等の睡眠障害を起こす危険性が高いといわれています。
日光を浴び覚醒水準を高め、夜は暗くして眠りやすい環境をつくることが大切です。
4)見守る
病気が原因でなく高齢であるがために傾眠状態にある場合は、体調を確認し見守るようにしましょう。
どれくらいの覚醒状態にあるのかを確認するようにしましょう。
覚醒時にしっかり栄養を摂れるような食事(栄養ジュース等)にする必要もあります。短時間で栄養を取るのが困難な場合は主治医に相談しましょう。
5. まとめ
■ 傾眠が急に現れた場合はなんらかの病気が隠れている可能性がある
■ 傾眠が続くことで体力や筋力が低下する恐れがある
■ まずは医師に相談し、原因となる疾患が隠れていないか診てもらう
■ 栄養失調にならないように十分気をつける
気持ちよくウトウト眠っているのを見ると、そっとしておきたくなる気持ちは分かりますが、病気から傾眠の症状が現れている可能性もあります。
急に意識がはっきりせず眠そうな症状が現れたら、単に眠いのか意識障害があるのか疑うようにしましょう。
認知症や脳の損傷、あるいは薬の副作用かもしれません。いつもと違うなと思ったらかかりつけ医に相談しましょう。
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