高齢者や認知症の方のトイレの介護(排泄介助)で困ることや注意点について
加齢や認知症が進むにつれて、トイレ(排泄処理)を自分で出来なくなってしまいます。家庭によっては親のトイレの世話をすることもあるでしょう。ここでは排泄介助をする上で困ることや注意点について説明していきます。
1. 介助される側の気持ちを考える
もし今ご自身がトイレを自力で行うことが出来ず、子供や他人である介護職員に手伝ってもらいながらすることになったらどうでしょうか。それがこれからずっと続くとしたらどうでしょう。多くの人はかなり嫌な気分になると思います。これは高齢になっても変わりません。誰しも死ぬまでトイレくらいは自力でしたいと思っています。それが叶わなくなってしまったときの無力感・絶望感を理解してあげることが大切です。
本人の自尊心のためにも、もし介助が必要になっても出来ることは自力で、可能ならばおむつに頼らずに生活出来るようにしてあげましょう。トイレに行くことが困難ならポータブルトイレや尿瓶などを用意して、一人でトイレが済ませられる環境を作ってあげましょう。どうしてもおむつが必要な方でも可能な限りトイレで済ませられるように排泄する時間(排泄パターン)を把握し、余裕を持ってトイレに誘導出来るようにします。
2. 排泄ケアは優先度を高くする
介護は食事を始め多くのことをしなければなりませんが、その中でも排泄は他のことを置いてでもするべき優先度の高い項目です。排泄は生理現象の中でも空腹や眠気に比べ後回しにすることが難しいです。更に排泄に失敗してしまうと自尊心が大きく傷つけられてしまい、生きる意欲を失う原因になってしまいかねないのです。
3. 失禁の対策、おむつについて
高齢者になると筋力の低下の他、認知症や脳梗塞の後遺症による神経障害などが原因となって尿失禁・便失禁が起こりやすくなります。排泄パターンを把握してあげることである程度は防げますが、それでも厳しいようならおむつに頼らなければなりません。
失禁対策の下着、おむつとしては
- 吸収布付きパンツ
- 生理用ナプキン形状の尿とりパッド
- 使い捨て紙パンツ、紙おむつ
などがあります。
これらの基本的な機能は尿を肌に触れさせず吸収することと、吸収したものが外に出てこないように内部に留めておくことです。その他に立体ギャザーを付けて勢い良く尿が出ても外にもれないようにするといった工夫がされているものもあります。
パッドの形状には大きく2つあって、山型と谷型で主流なのは山形です。それぞれのメリットは次のようになっています。
山型:尿道口に接しているために出てすぐに吸収が始まる。そのため尿が肌に触れる時間を短くしやすい。
谷型:山形では大量の尿が勢い良く出た場合におむつの外に漏れやすい。そこで一旦谷間に尿を溜め込めるようにしておくことで、外に漏れにくくする。
それぞれのおむつの特徴と着ける本人の希望を考慮してそれぞれにあったものを選んであげて下さい。
4. 介助する上での注意点
飲食量が減ってしまう
出来るだけ排泄介助されたくないという気持ちから飲食量が減ってしまう方がいらっしゃいます。その結果、栄養や水分が不足する、便秘になりやすくなるといった問題が発生します。介助される心の負担が軽くなるように明るく接することを心がけて、辛い・しんどいといった感情が表に出ないようにしてください。
プライバシーに気をつける
室のトイレで出来ない場合は特に周囲から見えないように敷居を用意する、必要がなければ終わるまで離れていてあげるなどプライバシーに考慮しましょう。
怒らない
排泄に失敗して衣服を汚したりした時に怒ってしまうと、声をかけづらくなってしまい失禁したり、失禁したことを隠そうとしてしまいがちです。
不安にさせないために声をかける
排泄介助中に黙って見守ったり掃除をしたりすると、雰囲気が悪くなり不安にさせてしまいます。排泄中に緊張しないように話しかけ、何かするときには事前に「水を流しますね」といったように伝えてあげましょう。
5. よくある悩み
トイレの水を流さない
若いころには水洗トイレがなかった高齢者が認知症になると、水を流す必用があることや水の流し方を覚えていない方もいます。介助する人が代わりに流してあげるか、声をかけてあげて一緒に流すことで習慣づけてあげましょう。
使用済みのトイレットペーパーを持って帰る
トイレットペーパーは水に流して捨てるということが分からなくなっている方もいます。トイレの中に高齢者の方がゴミ箱だと分かるものを置いてあげましょう。
トイレに来ても排泄をしない
トイレが排泄を行う場所だと分からなくなっている方もいます。高齢者に馴染みのある言葉である便所やお手洗いと言ってあげると分かってくれる場合があります。
トイレ以外の場所で排泄する
トイレ以外で排泄するのはいくつか理由が考えられます。
- トイレがどこか分からない、もしくはトイレという言葉が分からない
- トイレに移動するまでに我慢できず排泄してしまう
- 排泄している場所をトイレだと思いこんでいる
- トイレに行きたくない要素がある
「トイレはこちら→」といった張り紙を用意して誘導する、トイレ以外の言葉「お手洗い」に変えてあげましょう。
排泄パターンを把握して、事前にトイレに誘導してあげましょう。
トイレだと勘違いした原因がある可能性が高いですので、それを解消してあげましょう。
便器がすごく冷たい、蒸して暑い、介助してくれる人が嫌そうにしているといった原因があると行きたくなくなってしまいます。
失禁した下着などを隠してしまう
失禁することは本人にとってとても恥ずかしいことです。これは認知症になっても変わらずに残る事が多いです。なんとか他の人にバレないようにしたいですが、どうしていいか分からなくなった結果見つからないように隠してしまいます。見つけても自尊心を傷つけないように優しく声をかけてあげましょう。
失禁した高齢者への対応が分からない
特に初めて失禁した場合はどうしていいか分からないものだと思います。失禁した事自体を話題にするのではなく、「お腹は大丈夫?体調悪くない?」といったように接してあげましょう。失禁したことで本人が一番傷ついているのです。そのことを忘れないようにしましょう。
トイレに来てくれない
排泄の介助を受けるのは恥ずかしいことなので、トイレまで中々来てくれない方もいます。このような場合には、何か別のことをお誘いして、その準備としてトイレを勧めると上手くいきやすいです。例えば排泄タイミングを事前に調べておき、そのちょっと前に散歩にお誘いするついでにトイレに誘導するといった工夫をしてみましょう。
6. まとめ
- 排泄介助をされる側の気持ちを理解してあげましょう
- 可能な限り自力で排泄できるようにしてあげましょう
- 排泄介助は他の介助よりも優先して行いましょう
- おむつはそれぞれにあったものを選びましょう
排泄介助はする側も誘導や掃除などでとても苦労するものですが、最期まで自尊心をもって生きていく上で非常に有意義なことです。それを忘れないようにしてあげてください。
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