入浴できない高齢者の体を清潔に保つには?!準備するものと体を拭く(清拭)上でのの注意点
寝たきりの高齢者や頻繁に入浴することができない高齢者の体を清潔にするためには、定期的に体を拭いてあげる(清拭)ことが重要です。清拭はただ単に体を清潔にするだけでなく、体を拭くために体を動かすので、関節が固まってしまう(拘縮)ことを防いだり、体の血行も良くなったりします。今回は、寝たきりの高齢者の体に負担をかけない体の拭き方と、その注意点をご紹介します。
1. 清拭の前に(確認事項と準備するもの)
清拭を行う前に、以下のものを準備しましょう。
■ お湯(熱め 50度~55度)
お湯の入ったバケツは2つ用意しましょう。上半身と下半身用でそれぞれ用意します。
■ タオル(フェイスタオル 6~8枚)
タオルは多めに準備するとよいでしょう。1枚は拭いた後に体を乾かす(空拭き)用で使用します。
■ 新聞紙
床やカーペットを汚さないようにするために、バケツの下に敷いて使用します。新聞紙がない場合はビニール袋などで代用しましょう。
■ 着替え
清拭後の着替えを準備しておきましょう。
その他にも、拭いていない部分に掛けるためのバスタオルなどを準備しておくと、清拭中に体が冷えてしまうのを防げるので、高齢者の負担を軽減することができます。
準備ができたら、清拭をする前に本人の体の負担を軽減するため、以下のことを必ず確認しましょう。
■ 室温が適しているか
高齢者は衣服を脱ぐため、介護者が考える以上に寒く感じます。なるべく日中に行い、室内が寒い場合は暖かく(23度前後)して、必ず本人に確認を行いましょう。
■ 本人の顔色や体調
体調が悪いときに清拭を行うと、体調不良が悪化してしまう恐れがあります。清拭を行う前に、本人の顔色や体の痛いところなどがないか確認しましょう。
2. 体の拭き方(清拭の方法)
寝たきりの高齢者の体に負担をかけないようにするためには、どのように清拭したらよいのでしょうか。体の拭き方をステップごとにご説明します。
(ステップ1)清拭を行うことを本人に確認する
「今からお体を拭いていきますね。」「服を脱がしますね。」などと、声をかけましょう。いきなり体を触られると、びっくりして暴れ出したり、暴言を吐いたりしてしまう高齢者もいます。作業を始める前には清拭を行う旨を、必ず本人に伝えましょう。
(ステップ2)体を拭く順番
声をかけたら、用意したタオルをお湯で濡らして、お湯がたれないぐらいに絞って体を拭いていきます。体を拭く順番は以下の順で行います。
① 顔
耳の後ろや、首などは汚れが溜まりやすいので、念入りに拭きましょう。
② 手・腕
手首から肩にかけてやさしく拭いていきます。拭きにくい場合は手首を持つと拭きやすくなります。
③ 胸・お腹
円を描くように中心からマッサージをするように拭いていきます。
④ 背中
うつ伏せが難しい場合は体を横にして拭いていきます。このとき、何度も体位を変えると、本人の負担になってしまうため、体位を変えるのを少なくする工夫をしましょう。
⑤ 足
膝を曲げながら、かかとやくるぶしを拭いていきます。
⑥お尻・陰部
お尻は褥瘡(とこずれ)ができやすいので、注意が必要です。褥瘡ができている部分はそっと触れる程度で済ませ、刺激を与えないようにするのがポイントです。
全身の衣服を脱がしてしまうと、寝たきりの高齢者の方の体が冷えてしまうので、上半身と下半身で分けて体を拭いていくのがポイントです。また、体を拭く際は、心臓から遠いところから、心臓に向かって拭いていくことで、血液の循環がよくなり、マッサージ効果が期待できます。
(ステップ3)衣服を着せる
衣服を着せるときも、全身を拭き終わってから着せるのではなく、上半身が拭き終わったら上半身を、下半身が終わったら下半身を着せるようにしましょう。このようにすることで、寝たきりの高齢者の体を冷やすことなく、体への負担を最小限に抑えることができます。
3. やってはいけない!(寝たきりの高齢者の清拭の注意点)
ここまで、体の拭き方をご説明してきましたが、せっかく体を綺麗にするのに、精神的なストレスや体へ負担をかけてしまってはもったいないですよね。誰でも裸を見られるのは、嫌なものです。寝たきりの高齢者の方ももちろん同じ気持ちです。そのため、プライバシーの配慮は必ず行いましょう。そして、何より高齢者の体に負担をかけないようにするためには、手早くスピーディーに行うことが重要です。拭く箇所や、順番をきちんと確認し、短時間で終わらせるようにしましょう。体位を変えるのが苦手な方はぜひ次のページも参考にしてください。(「簡単!女性でもできる腰痛になりにくい持ち上げ方と体位変換のコツ」)また、力を入れすぎてないか、タオルが熱すぎないかなど本人に確認しながら行うことで、心も体も綺麗にしてあげましょう。
4. まとめ
- 清拭前に必要なものを準備し、室温や体調などを確認する。
- 体を拭く手順は、顔、手、腕、胸、お腹、背中、足、お尻、陰部の順にやさしく拭いていく。
- 寝たきりの高齢者の体に負担をかけないように手短に行う。
清拭は慣れるまでは手間取りますが、回数を重ねるごとに自然と身についてきます。繰り返し行っていくうちに寝たきりの高齢者の方に合った方法がきっと見つかるはずですので、まずは今回ご紹介した方法を是非試してみてください。
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