入浴は高齢者にとって、体の清潔を保つ以外にも多くのメリットがあります。
お湯につかることで副交感神経が優位になり、リラックス効果も期待できます。しかしながら、高齢者の入浴中の事故も年々増加しています。
高齢者が安全に入浴するために、今回は、入浴中の事故原因と入浴時の注意点についてご紹介します。

1. 入浴中の事故

高齢者の入浴事故は年々増加しています。
入浴中の事故を起こす原因にはどのようなものがあるでしょうか。
入浴事故を防ぐためにも、原因を事前に把握しておきましょう。

●意識障害

入浴中の事故原因は様々ですが、最も多いのが意識障害です。
入浴中に意識が飛び、浴槽内でおぼれてしまうケースが増えています。
入浴中に意識障害になる原因は、温熱作用による血流の増加と体にかかる水圧による血圧の増加により、高齢者の体に負担がかかる状態になるからです。これにより、失神やめまいが起こり、意識障害による事故につながってしまいます。

●血圧の変動

血圧の変動により、脳梗塞や心筋梗塞になってしまうケースもあります。
これは、「ヒートショック」と呼ばれ、脱衣所と浴室の温度差により引き起こされ、寒い脱衣所から熱い浴室に入る時には注意が必要です。
高齢者の場合、少しの温度差でも体にとっては大きなダメージとなってしまうため、血圧の変動が激しい環境を改善する必要があります。

●転倒

浴室内は非常に滑りやすいため、浴室に入る際や、浴槽から出る際などに転倒してしまい、事故につながる場合があります。一般の人なら何てことない場面でも、高齢者にとっては骨折などの大けがにつながる可能性があります。

2. 入浴前の注意点と対策

入浴中の事故原因が分かったところで、「入浴中だけ注意していれば大丈夫！」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、残念ながらそれは違います。もちろん入浴中は重要ですが、入浴前も注意すべき点がいくつかあります。
ここでは、入浴前の注意点について説明していきます。

●滑りやすい

浴室は非常に滑りやすいため、足元には十分に注意が必要です。転倒防止のため、浴室の床や、浴槽内は滑り止めを付け、浴槽の出入りのために手すりを設置するとよいでしょう。
また、浴室と脱衣所の間に段差がある場合は、スノコを置いて段差をなくすと躓きにくくなります。

●着替えの準備

お風呂の前には、必ず着替えを準備しましょう。入浴後に準備が整っていないと、すぐに着替えることができず、体に負担がかかってしまいます。

●浴室と脱衣所の温度

ヒートショックが起こしやすい脱衣所と浴室の温度差をなくしましょう。脱衣所が寒い場合は、暖房器具を使用して、温めておくのが有効的です。
また、浴槽にお湯を溜めてすぐの状態、いわゆる一番風呂は浴室内が温まっていないため、ヒートショックが起こりやすいので絶対にやめましょう。
入浴中には頻繁に声をかけて様子を窺いましょう。様子がおかしい場合には、すぐにお風呂から出るように指示してください。立ち上がる際には急に立ち上がらずにゆっくりと立ち上がるよう、誘導してあげましょう。

3. 入浴中の注意点と対策

入浴前の注意点について知識を深めたところで、続いて最も重要な入浴中の注意点もしっかりと理解し、安全に入浴しましょう。

●お湯の温度

高齢者が熱いと感じない温度は38度～40度が一般的な適温です。40度以上には設定しないように気をつけましょう。
また、必ず入浴する方に手で熱くないかどうか温度を確認してもらうとよいでしょう。たとえ、熱い湯船が好きな方でも、安全を重視し、必ず適温に設定してください。

●入浴時間

入浴時間は10分前後にしましょう。心臓に負担がかからないようにするには、半身浴がおすすめです。
長湯が好きな方の場合でも、家族で声をかけ、様子を必ず窺うようにしてください。

4. まとめ

• 入浴時の事故は意識障害や血圧の変動、浴室が滑りやすいなどの原因が挙げられる
• 入浴前の注意点は浴室の環境を整え、着替えなどを準備することが重要である
• 入浴中の注意点はお湯の温度を適温に設定し、入浴時間を短くする
• 入浴中は必ず声掛けをし、異常がないか確認をする。

以上のポイントを踏まえつつ、高齢者をお風呂に入れましょう。注意喚起を促すことで、高齢者の入浴事故を防ぐことができます。
入浴事故を事前に防止し、高齢者に安心して入浴してもらえるようにしましょう。

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