いざという時に困らないために 書き方や種類、注意点など遺言書に関する基礎知識
遺言とは家族や友人に自分の考えや思いを言葉で残すことです。特に現在では自分の死後に財産をどのように扱うか(相続するか)を指定する、という大きな意義があります。相続内容をめぐって家族が争うことを防ぐためにも、遺言について正しい知識を持ちましょう。
1.遺言書と遺書
遺言を残す方法として法律で認められているのは遺言書です。口頭でのみ伝えたり、ビデオカメラで撮影して記録を残したりしたものは法的な効力はありませんので注意して下さい。遺言書の書き方も法律で定められており、誤った方法で書いた遺言書は無効となってしまいます。
遺言書に似たような言葉として遺書があります。基本的には亡くなる前に書く家族などに宛てた手紙のことで、遺書は遺言書と違い、決まった書き方はなく法律上の効力もありません。
2.遺言書の書き方
ご自身が遺言書を書かれる場合、遺言書は次の要件を満たす必要があります。
- 遺言者が全て自署する
- 作成した日付を記入する
- 遺言者が署名押印する
この3つの要件が満たされていない場合、遺言書は無効となってしまいます。
遺書に書く項目は次のようなものになります。
- 表題・タイトル
- 相続内容
- 遺言執行者
- 付言事項
- 日付
- 署名・押印
「遺言書」と記入します。
誰に何を相続するかを記入します。疑義が生まれないようにはっきりと書くことが基本ですが、「兄弟で協議の上決定すること」といった内容でも構いません。なお法定相続人ではない方に遺産を分配する場合、「◯◯を相続させる」ではなく「〇〇を遺贈する」という書き方にします。
遺言執行者を指定します。遺言執行者は遺言を執行するために必要な権利義務を持ちます。例えば相続する上で銀行の預貯金解約を行う必要が出た場合、遺言執行者がいなければ相続人全員の押印、印鑑証明書、遺産分割協議書といったものが必要になります。相続をスムーズに行うためにも遺言執行者は指定しておくと良いでしょう。
法的には必要な項目ではありません。相続内容についてどうしてこのように決定したのかという理由を書いたり、家族へのメッセージを書いたりします。
正確に日付を記入します。西暦でも和暦でも構いませんが、年月日は全て記入します。
遺言者 ◯◯ ◯◯ と署名します。押印は認印でも実印でも法的には構いませんが、実印のほうが望ましいとされています。
3.遺言書の訂正
遺言書の内容を間違えてしまった場合や後日修正する必要が出来た場合の訂正方法が法律で定められています。
- 訂正前の文章を読み取れるように二重線で取り消す
- 訂正箇所の近くに訂正後の文章を書き足す
- 訂正した箇所に訂正印を押す
- 遺言書の欄外に「◯行目、△字削除、□字加入」と記載し、署名する
訂正が正しく行われていない遺言書は訂正前の状態が正しいものとして扱われてしまいます。特に理由がなければ新しく遺言書を書き直す方が安全です。
4.遺言書の封筒
遺言書を書き終えたら封筒に入れて封印します。この封筒は家族が開封する前に家庭裁判所で検認を受ける必要があります。これを守らず開けた方には最大5万円の罰金が課せられます。
封筒には遺言書であることと、検認前に開封されるのを防止するために「遺言書在中」、「開封前に家庭裁判所で検認すること」といった注意書きをしておきましょう。
5.自筆証書遺言の欠点・デメリット
遺言者が自筆で遺言書を作成したものを自筆証書遺言といいます。一人で書けるためこの方法を取る人が多いですが、次のような欠点があります。
- 必要要件を満たせず、遺言書が無効になりやすい
- 遺言書が紛失する、もしくは発見されない可能性がある
- 悪意を持った人物によって偽造・改ざんされる可能性がある
これらの問題を解決するために、公正証書遺言と秘密証書遺言というものがあります。
これらは遺言者の準備した証人と公証人が遺言書の存在を証明したり、代理で遺言書を作成したりします。
6.公正証書遺言
公証人役場に行き、公証人に作成してもらった遺言書を公正証書遺言といいます。遺言者が遺言書の内容を公証人に伝え、公証人が遺言書を作成します。公証人が遺言書を作成・管理するため自筆証書遺言で発生する問題は全て解消します。ただし作成には手数料がかかってしまいます。1億円を3人で均等に相続する場合、10万円の手数料がかかります。
7.秘密証書遺言
本人が自筆、もしくはパソコン等で作成した遺言書を公証人役場に提出し、遺言書が存在することだけを証明してもらうことを秘密証書遺言と呼びます。公正証書遺言では遺言の内容を公証人に伝えなければなりませんが、こちらは秘密にすることが出来ます。公証人が管理するため偽造・改ざんの被害に会う可能性も低いです。一方で遺言書に不備があるかのチェックも受けることは出来ないので、やはり遺言書が無効になってしまう問題は残ります。また手数料として11,000円がかかることもデメリットでしょう。
8.まとめ
- 遺言書は相続について法的拘束力がある
- 書き方や訂正方法が法律で指定されている
- 不備がある遺言書は無効となる
遺言書は家族への最期のメッセージになります。残された家族が相続でトラブルに巻き込まれないためにもしっかりと用意しましょう。
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