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接骨院・整骨院・柔道整復師の抱える問題 保険の不正請求とは?急性・亜急性とは?

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接骨院・整骨院は柔道整復師と呼ばれる国家資格者が運営する施術所です。捻挫や打撲といった外傷に対して保険を使うことが出来ます。湿布を貼る以外にも手技施術を行ってくれることや、施術師と関わる時間が長く距離も近いためにコミュニケーションがとりやすいことから整形外科よりも整骨院を選ぶ方がいらっしゃいます。そんな整骨院ですが、いくつかの問題を抱えています。ここでは整骨院の抱える問題点を紹介します。

1.保険の不正請求

一般に保険医療においては、まず患者から窓口で一部負担金(0~3割の料金)をいただき、その後保険者(国民健康保険、全国健康保険協会、各健康保険組合など)に残りの金額(7~10割の料金)を請求します。この保険者に請求する金額を本来の金額よりも多く請求することを不正請求といいます。整骨院ではこの不正請求が後を絶たず、大きな問題となっています。

不正請求を行う方法は次のようなものがよく見られます。

  • 施術回数の水増し
  • 患者が整骨院で施術を受けた回数よりも多く請求を行います。既に負傷が治って来なくなった患者を来院したことにするケース、保険証の情報を入手してそれを元に請求を行うケースなどがあります。

  • 施術部位の水増し
  • 実際には1箇所しか負傷していないものを2~3箇所の負傷があるかのように請求を行います。例えば右足首の捻挫しかしていないのに、請求を上げるときにはこけた際に手をついて右手首も捻挫したことするといったことが行われています。

  • リラクゼーション(マッサージ)の提供
  • 整骨院ではリラクゼーション(マッサージなど)の提供では保険請求は出来ません。そのため負傷していることにして保険請求を行うということがよく行われています。1回500円などの異常な低価格でマッサージを行っている整骨院をよく見かけますが、ほぼ間違いなくこの不正を行っています。

  • 部位ころがし
  • 柔道整復術の保険請求は、打撲・ねんざの施術が3ヶ月を超過した場合、支給申請書に「長期施術継続理由書」を添付しなければならいない制度と、負傷してから5ヶ月を経過すると請求できる金額が80%に減額される制度があります。この「長期施術継続理由書」の添付や減額を回避するために、3ヶ月経つ前に負傷が治癒したことにして、新しい負傷を追加することを部位ころがしと呼んでいます。主に上記のリラクゼーション(マッサージ)の提供のときに合わせて用いられる不正になります。

  • 無資格者による施術
  • 保険請求のためには柔道整復師の国家資格が必要になりますが、より人件費を安くするためにマッサージ経験者や専門学校の学生といった無資格者を雇って施術を行うケースがあります。専門学校生は現場経験が積めるため積極的に不正に加担してしまいます。

2.不正請求が増えた背景

整骨院で不正請求が頻発する原因としては整骨院が増えすぎたことがあげられます。もともと柔道整復師の養成学校は全国に14校しかありませんでした。養成学校の新規設立に制限をかけていたためです。ところが平成10年(1998年)、新規設立に制限をかけることは違法であると裁判で国が敗訴しました。その結果、養成学校は100校以上にまで増加します。そこで次のような問題が起こりました。

  • 教員不足
  • 養成学校の教員が不足し、一度も現場に立ったことがない柔道整復師でも教員として招かれるようになります。結果として実技は教えられず、国家試験に受かることを主目的とした養成学校が増加してしまいます。保険請求も行ったことがないため、現場で必要な知識が教えられない状況が生まれます。

  • 柔道整復師の増加、質の低下
  • 学校の増加に合わせて柔道整復師も急増しました。しかし教員不足の状況から十分な教育、特に現場で必要な教育が受けられないまま国家試験に合格する柔道整復師が増加していきます。卒業後就職した整骨院で保険請求を先輩柔道整復師から教わるのですが、その過程で不正請求の方法を覚えてしまいます。整骨院としては正しい方法で請求しているつもりでも、実は間違っているということも少なくありません。

  • 整骨院の経営難
  • 柔道整復師の増加により整骨院も全国に大量に開設されました。その結果、供給過多となり経営難になる整骨院が多発します。高い理想を掲げて整骨院を開設した人でも、いざお金が無くなると不正に手を染めてしまうものです。

  • レセプトの白紙委任
  • 整骨院ではレセプト(柔道整復療養費支給申請書)と呼ばれる用紙に施術を行った日付や内容等を記載して各保険者に送ることで保険請求を行います。このレセプトですが毎月の最初の来院時に患者に白紙の状態でサインをしてもらっています。これは本来整骨院で保険請求を行うのは患者ですが、整骨院に代わりに請求してもらえるように依頼するためにサインをしています。これはレセプトを患者が書くのは難しく、手間がかかるため患者負担を軽減するという目的があります。ただし白紙の状態でサインをしているので、その後どんな内容で請求したかまでは分からないために不正請求が起きる原因になると言われています。

    ただ白紙委任が原因だとすると保険請求の内容を確認しない、サインもしない病院での保険請求でも不正が起きると考えられます。白紙委任問題は不正を行うハードルを下げてはいますが、根本的な原因とは呼びにくいのではないでしょうか。

不正請求問題は厚生労働省、各保険者は重く考えているため今後も不正対策のための政策や活動が行われていくと考えられます。しかし一番大切なのは患者側が不正を行っている整骨院を利用しないことです。明らかに怪しい場合は、ご自身の加入している保険者に相談してみるのが良いでしょう。

3.急性・亜急性

柔道整復で保険が適用されるのは急性・亜急性の負傷(骨折、脱臼、打撲、捻挫、挫傷)ですが、この急性・亜急性という言葉に少し問題があります。医学的には急性・亜急性というと負傷の時間経過を指す言葉です。急性(症状が強く表れたとき)→亜急性、回復期(症状が落ち着いたとき)→慢性、陳旧性(症状が落ち着いているが、治癒しない状態が続くとき)と変化していきます。一方柔道整復術では急性・亜急性とは力の加わり方、負傷の仕方のことを指す言葉になっています。急性の負傷とは原因と負傷の因果関係がはっきりしているもので、転倒したり物にぶつかったりするなどの瞬間的な力による負傷のことになります。亜急性の負傷とは原因がすぐには判明せず、生活の中で繰り返し受ける力によって生じる負傷のことです。

亜急性の中でも徐々に負傷が悪化していくものと、あるとき突然に負傷となるものにわかれます。徐々に負傷が悪化するものとしてはスポーツ障害の野球肘、テニス肘があげられます。あるとき突然に負傷となるものの代表は疲労骨折になります。疲労骨折は日々の生活の中で負担をかけ続けた結果、何気ない動作で負傷してしまうことがあります。特別なことをしなくても起きる場合があり、原因を探るには問診をしっかりしなければなりません。

この意味の違いのせいで度々問題が起きているので、意味を統一する、別の言葉で置き換える(作り出す)、保険請求の適用範囲を見直すといったことが必要かもしれません。

4.まとめ

  • 整骨院には不正請求の問題がある
  • 不正の一因は整骨院が増えすぎたことによる経営難
  • 白紙委任も不正が起こりやすくする要因になっている
  • 急性・亜急性という言葉が医学と柔道整復術では意味が異なる

整骨院の不正請求は後を絶たず、暴力団の資金源になっているという報道もありました。真面目に運営している整骨院を選び、異常に安い料金で提供している怪しい整骨院は利用しないようにしましょう。
不正をなくすには整骨院業界の現行制度を見直し、適正な運用ができる仕組みを再構築していくことが求められています。そのためには行政・保険者・整骨院が協力していくことが必要不可欠なのです。

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