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鍼(はり)・針治療の紹介。何に効果があるのか?どんな内容なのか?

鍼治療 Acupuncture

鍼(針)治療に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか?なんとなく信用できない、科学的ではないと感じる人もいるのではないでしょうか。実は世界では鍼治療を研究し、論文発表によって鍼治療の科学的な根拠や効果が分かりつつあるのです。そんな鍼治療についてご紹介していきます。

1.鍼治療の施術内容

  • 鍼について
  • 鍼治療で用いる鍼は、ステンレス・銀・金などで作られていて、最も普及しているのはステンレスになっています。主に使われているのは日本鍼と呼ばれるもので、大きさは一番細い0号が0.14mmで、1号増える毎に0.02mmずつ太くなっていきます。

    日本鍼の他に中国鍼を用いることもあります。中国鍼は比較的太く、刺した後に操作しやすいように持ちやすくなっています。

    鍼は体に刺すものですので、複数の患者に使いまわすと感染症の原因となってしまいます。そのため基本的には鍼は使い捨てとなっています。店舗によっては患者用の鍼を用意し、洗浄・殺菌・消毒することで次回施術に使うこともあります。

  • 刺し方
  • 日本鍼では円形の筒を利用する管鍼法という手法で鍼を刺すのが一般的です。円形の筒に鍼を入れて「トントン」と軽く叩いて刺し入れます。中国鍼では鍼を指で摘み、直接刺し入れます。日本鍼の方が細いため、中国鍼よりも痛みを感じにくいと言われています。

  • 刺した後の施術
  • 刺したツボや患部の状態によって施術内容は変わりますが、

    1. 鍼を上下左右に動かす
    2. 指で弾いて振動させる
    3. 10分程度安静にする

    といった施術が一般的です。

    刺した後の施術で患者がどのように感じるかを「ひびき」「得気」とよび、中国鍼治療ではこれを重要視しています。「ひびき」がなければツボに届いていないということになります。
    「ひびき」は重さ、だるさ、痺れ、気持ちよい、痛いなど人によって異なります。

    一般的に日本鍼の方が痛みは少なくソフトな施術になります。逆に中国鍼は刺したときに痛みや「ひびき」も出やすいですが、日本鍼では効かなかった人でも効果が実感しやすいとされています。

2.鍼治療の効果

1997年にアメリカ国立衛生研究所NIHが公表した鍼灸で有効な傷病・症状は次の表になります。

神経系疾患 神経痛・神経麻痺・痙攣・脳卒中後遺症・自律神経失調症・頭痛・めまい・不眠・神経症・ノイローゼ・ヒステリー
運動器系疾患 関節炎・リウマチ・頚肩腕症候群・頚椎捻挫後遺症・五十肩・腱鞘炎・腰痛・外傷の後遺症(骨折、打撲、むちうち、捻挫)
循環器系疾患 心臓神経症・動脈硬化症・高血圧低血圧症・動悸・息切れ
呼吸器系疾患 気管支炎・喘息・風邪および予防
消化器系疾患 胃腸病(胃炎、消化不良、胃下垂、胃酸過多、下痢、便秘)・胆嚢炎・肝機能障害・肝炎・胃十二指腸潰瘍・痔疾
代謝内分秘系疾患 バセドウ氏病・糖尿病・痛風・脚気・貧血
生殖、泌尿器系疾患 膀胱炎・尿道炎・性機能障害・尿閉・腎炎・前立腺肥大・陰萎
婦人科系疾患 更年期障害・乳腺炎・白帯下・生理痛・月経不順・冷え性・血の道・不妊
耳鼻咽喉科系疾患 中耳炎・耳鳴・難聴・メニエル氏病・鼻出血・鼻炎・ちくのう・咽喉頭炎・へんとう炎
眼科系疾患 眼精疲労・仮性近視・結膜炎・疲れ目・かすみ目・ものもらい
小児科疾患 小児神経症(夜泣き、かんむし、夜驚、消化不良、偏食、食欲不振、不眠)・小児喘息・アレルギー性湿疹・耳下腺炎・夜尿症・虚弱体質の改善

他にもWHOが1979年に有効な可能性があるリストが出されるなどしています。

NIHの発表から既に10年以上経過していることもありその後様々な試験が行われ、その結果を分析することによって有効な傷病・症状は変化しています。2013年9月に発行された科学雑誌PLOS Medicineにはうつ病に鍼治療が有効な可能性があるという研究結果が発表されるなど、時代とともに鍼治療が何に有効なのかが変わってきています。

現在、鍼治療に鎮痛効果があるのは次のような理由だと考えられています。

  1. ゲートコントロール…針刺激が脊髄において痛みを抑制する。
  2. エンドルフィン…針刺激がモルヒネ様鎮痛物質の遊離を促し、痛みを抑制する。
  3. 末梢神経の遮断効果…針刺激が末梢神経の痛みのインパルスを遮断する。
  4. 経穴(ツボ)の針刺激による痛覚閾値の上昇による鎮痛効果。
  5. 血液循環の改善…筋肉の緊張をゆるめ血行状態を良くする。

参考URL:公益社団法人 日本鍼灸師会
http://www.harikyu.or.jp/general/effect.html

鍼治療はなぜそういった現象が起こるのかといった科学的な研究が進みつつありますが、医療の現場で積極的に使われるほど医学的な根拠、再現性の高さ(どのくらいの割合で有効なのか)・他の治療法との優位性(あえて鍼治療を選ぶ必要があるのか)といった点ではまだまだ研究の余地があります。

3.鍼治療の後の不調 瞑眩(めんげん)、好転反応

鍼治療後に起こる痛みやダルさといった不調を感じることがあります。施術が上手く行っていないために起こることももちろんありますが、瞑眩(めんげん)や好転反応と言われる正常な反応である場合が多いです。好転反応は漢方薬など東洋医学では一般的な考えです。

例えば肩こりで説明すると、筋肉はコリがひどくなるにつれて
痛くない→痛い→すごく痛い→痛い→痛くない
という変化をします。そのためひどい肩こりの人などは回復した結果、逆に痛みが出ることがあります。

他には施術をしてもらったところは痛くなくなったが、別の箇所が痛むようになったというのもよくあることです。これは人間の体が同時に複数箇所の痛みを感じるのが苦手なことが原因だとされています。つまり、一番痛かったところを直した結果、次に痛い場所が気になるようになったということです。

4. 日本の鍼治療(保険施術)

飛鳥時代に中国から日本へ伝わって以降、日本では多くの人が鍼治療を受けてきました。しかし戦後GHQによる指導の影響などから日本での鍼治療を始め、あん摩マッサージや灸治療、柔道整復術といった伝統医療は廃絶されそうになってしまいます。そこで各業界団体が協力し、GHQや厚生労働省に働きかけを行い、その結果、1947年(昭和22年)に「あん摩、はり、きゅう、柔道整復等営業法」が公布されました。この法律が現在の「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」につながっています。

「あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律」では次のときに鍼治療の医療保険適用が認められています。

  1. 慢性病であって医師による適当な治療手段のないものであること、主として次の6疾病
    • 神経痛
    • リウマチ
    • 頚腕症候群
    • 五十肩
    • 腰痛症
    • 頚椎捻挫後遺症

    かこれらと同一範疇と認められること

  2. 医師の同意書の交付を受けて施術を受けること

わかりづらいですが、上記の6疾病に関しては慢性期でなくても保険適用が可能となっています。もしこれらの疾病でお悩みの方で鍼治療を試してみたい方は、一度担当の医師に相談してみると良いと思います。

5.まとめ

  1. 鍼には日本鍼と中国鍼の2種類がある
  2. 多くの痛みや内臓疾患に鍼治療は有効だと言われている
  3. 鍼治療の科学的研究は進みつつあるが、医学的研究はこれからである
  4. 鍼治療の後には好転反応と呼ばれる一時的な不調が起こりうる
  5. 疾病によっては日本でも保険医療として鍼治療が受けられる

2017年現在、統合医療として西洋医学と伝統医学を組み合わせた新しい医療を目指していこうとする流れが世界で出来ています。鍼治療が統合医療の中で重要な役割を果たす日が来るのかもしれませんね。

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